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【M&A事例】QiitaのM&Aから約6年、事業成長の軌跡を振り返る

エイチームでは、2023年10月13日に開示した「上場維持基準適合に向けた計画の進捗状況及び計画内容の一部変更について」の記載の通り、刷新した成長戦略の遂行としてインオーガニック成長への取組、投資事業の成長及び収益性が悪化した事業の回復に努めております。刷新した成長戦略においては、当社の強みであるデジタルマーケティング力を中心にM&Aによるインオーガニック投資でメディア・機能などを獲得してさらなる事業成長を狙います

FY2024 第1四半期決算発表資料

今回は、2017年12月にM&Aを実施したQiita株式会社のM&A及びPMI(統合プロセス)を振り返り、M&Aの背景や狙い、統合後の事業成長について、Qiitaの代表取締役社長の柴田健介氏にインタビューを実施しました。


Qiita株式会社 代表取締役社長 柴田 健介

2009年、新卒でエイチームに入社。マーケティンググループに所属し、自社サービスのプロモーションに従事。2012年には自ら企画した「ZeroApp」のプロジェクトリーダーとして新規サービスの立ち上げを行う。その後、メディアサービス部の部長、マーケティンググループのマネージャーなどを歴任し、2019年にIncrements株式会社(現Qiita株式会社)の社長に就任。

Qiita のM&Aを実施した背景と狙い

2017年12月、Qiita のM&Aを実施

当時のエイチームの経営方針は、多様な事業を展開する「総合IT企業」として多角的なポートフォリオを展開する方針でした。エンジニアのプラットフォームである「Qiita」は当時にはない事業ドメインであり、生理日・排卵日予測アプリ「ラルーン*」やエンターテインメント事業以外のプラットフォームビジネスに参入する足掛かりにもなると考えたのです。また、M&A前のQiitaには組織のマネジメントとマネタイズという経営課題がありましたが、私たちの企業文化とビジネス展開力がQiitaにとってもメリットになると考えた点もM&Aを実施した背景の一つです。
※ラルーン事業は2024年2月1日付でメドレー社に事業譲渡

M&Aを行うことで期待した成果

将来的にキャッシュフローが安定することを期待しました。加えて、新しいプラットフォームビジネスに参入することで、当社のビジネスの幅が拡大するうえに、事業を多数抱えることにより社員の異動などキャリアの選択肢を増やせるとも考えました。

また、当時はITサービスを展開する当社にとってエンジニア採用は経営課題であり、日本最大級のエンジニアコミュニティであるQiitaを買収することで、Qiitaのブランド力によるIT業界での認知度の向上に期待した面もあります。そのブランド力を活かして、エンジニアの人たちにエイチームのブランドをアピールできるとも考えました。

Qiitaが抱えていた課題を解決できると考えた理由

当社は2013年より分社化を進め、現在は持株会社体制として7つのグループ会社があります。そして、事業の経験を積んだ社員は社長として子会社の経営を任されています。そうした体制のもと、各社の事業・サービスが順調に成長していたので、事業運営と経営という観点でのマネジメント体制の構築とマネタイズには自信がありました。
 
また、当社は多様な事業を生み出し、成功に導いてきたビジネス展開力を強みとしています。例えば、ライフスタイルサポート事業の「引越し侍」の引越し業者の一括見積比較サイトのビジネスモデルを自動車関連や金融メディアなどにも展開することに成功いたしました。

このように、ユーザーとクライアントのニーズに応えるビジネスを10年以上も展開・成長させてきた実績とノウハウを活かし、当時のQiitaの経営課題は十分に解決できるものと考えておりました。

PMI(統合プロセス)の体制や取り組み内容

半年で社内インフラを統合

当社ではグループ各社の独立的な運営をベースに考えているので、当時のQiitaのM&Aでは、事業のシナジーを生み出すためのPMIは計画しませんでした。私たちが取り組んだのは、Qiitaが当社グループの中で機能するように管理部門に関することや社内インフラを統合することです。まずは、安定的なビジネスの運営のため、社員が働く環境を整備することが目的でしたので、半年程度で完了しました。

エイチームグループとしての一体感

M&Aを実施した2年後の2019年12月に私は代表取締役社長に就任しました。その前はエイチームのエンターテインメント事業本部に所属しており、当時の私の立場から見たQiitaは、唯一東京に本社*を構えていたこともあり別会社に近い印象でした。

しかし、実際に社長に就任してみると、独自の文化や考え方がありながらもエイチームグループとしての一体感があることを感じました。そのように感じられたのは、社内インフラなどの統合が迅速に進んだことに加え、エイチームの若手人材の数名がM&A後にQiitaに異動して中心人物として活躍していたことが理由だと思います。

※当社グループの各子会社の多くは名古屋市に本社を構え、当時のQiita株式会社は東京都港区にありました。2021年12月に本社所在地を変更し、現在は名古屋市に本社を構えています。

グループの経営資源を活用し、さらなる成長を実現

収益の伸びと人材の拡充

M&Aによる統合以降、広告による収益、そして会員数を順調に伸ばすことができました。エイチームのこれまでのノウハウやリソースを有効に活かすことができた結果だと思います。また、M&A前は営業職などのビジネスサイドのメンバーの採用が難しかったのですが、エイチームの若手の主力メンバーが異動したことによってその問題をクリアすることができましたし、M&A前から活躍しているQiitaのビジネスサイドメンバーとの融合によって営業力の強化にもつながりました。

2024年1月22日「日本最大級のエンジニアコミュニティ「Qiita」が会員数120万人を突破 100万人突破から約6ヵ月で20%増の成長

ユーザー満足度を上げてサービスが成長

Qiitaはユーザーの記事投稿によって成り立っているサービスであるためユーザー満足度をとても大切にしています。その改善ためにKPIを設定して様々なことに取り組んだことがサービスの成長につながりました。1年の間で最も記事投稿が盛り上がる「Qiita Advent Calendar」が実施される12月に関しては、昨年過去最高のアクティブユーザー数を記録できました。
 
また一方でCX(Customer Experience)向上グループという専門の部署を立ち上げて、定量目標を設定しづらい施策や、短期の施策と比較するとどうしても優先度が後回しになってしまう重要な取り組みにも一定の注力を図ってきました。例えばアクセシビリティ*に対する取り組みなどがそうです。
※障がいの有無やその程度、利用環境などにかかわらずサービスを利用できるようにすること
 
M&A後に力を入れてきた取り組みとしてはSNSの情報発信をはじめ、エンジニア向けテックカンファレンス「Qiita Conference」、記事投稿イベント「Qiita Engineer Festa」、オンライントークイベント「Qiita Night」、記事投稿イベント「Qiita Advent Calendar」のアップデート、企業とタイアップしたハッカソンの開催、Qiita表彰プログラムなど様々な施策を行いました。
 
プロダクトの成長に伴い、会員数も右肩上がりで伸び続け、昨年は過去最高の増加ペースで累計会員数が120万人を突破しました。また、イベントの参加数やそれによる収入も伸びた他、組織の技術力を発信できる「Qiita Organization」が登録数2,000組織を突破するなど、着実に成長を続けています。

各種イベントの参加者数の推移及び予想

FY2023通期決算説明資料

Qiita Advent Calendar数の推移及び予想

FY2023 Q2決算説明資料

PMIが成功した要因は双方の相性と企業文化

当社代表の林高生と当時のQiita代表である海野弘成氏の二人の相性が良かった点は大きかったように感じます。エイチームの代表である林がエンジニア出身であり、テック系の事業であるQiitaとは親和性があったとも思います。また、エイチームにはお互いを認め合うことが文化として根付いています。人と人がお互いを認め合うのと同じで、これまで別々だった会社と会社が一つになるM&Aにおいても、お互いを認め合う文化が影響したのかもしれません。


当社は、引き続き刷新した成長戦略の遂行としてインオーガニック成長への取組を推進してまいります。今後、M&Aの進捗など開示すべき事項が発生しましたら速やかにIR情報として開示いたします。
 
投資家・株主の皆様のご期待に添えられるよう引き続き尽力してまいりますので、引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。


IR お問い合わせ先
株式会社エイチーム 社長室 IR担当
E-mail:ir@a-tm.co.jp
ご意見 / ご質問:株主・投資家情報等に関するお問い合わせ

株主・投資家情報:https://www.a-tm.co.jp/ir/
Shared Researchレポート:https://sharedresearch.jp/ja/3662
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<免責事項>
本記事に記載されている情報には、計画、経営方針、戦略などには、「見通し情報(forward-looking statements)」を含みます。これらは、現在入手可能な情報から得られた見込み、予測及びリスクを伴う想定に基づく当社の判断であり、実質的にこれらの記述とは異なる結果を招き得る不確実性を含んでいます。それらリスクや不確実性には、業界並びに市場の状況、金利、通貨為替変動といった一般的な国内及び国際的な経済状況が含まれます。

また、本記事は投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社は、これらの情報の内容の正確性、安全性、その他あらゆる事項について一切表明・保証するものではありません。

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