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2023年6月3日 ポートフォリオ展とインターン展 2023 登壇内容

こんにちは。
株式会社エイチームのグループ会社である、Qiita株式会社でデザイナーをしている綿貫です。

この記事はポートフォリオ展とインターン展という学生向けイベントで話した内容です。
イベントに参加した方だけでなく、より多くの方にお役に立てればと思って note にも投稿してみました。
当日のスライドと原稿なので、話し言葉での表現をしている箇所もありますが、ご了承ください。

発表内容

タイトルコール

「20 分で学ぶサービスデザイン攻略法 / 広告デザイン攻略法」というテーマをいただいていて、エイチームからは「ユーザーが本当に求めているものを知るためのアクション」を発表します。


自己紹介

みなさんこんにちは。
私は綿貫佳祐といいます。

エイチームの中でも、グループ会社の Qiita に所属しています。
今日は、サービスデザイン全般における話と、具体的に Qiita ではどんなことをしていたか、という話をします。


「ユーザーが本当に求めているもの」について

まずは、タイトルにある「ユーザーが本当に求めているもの」という概念についてお話します。


ユーザーが何を求めているか?という話題になると、こんな意見が出ることもあります。


  1. 自分達が開発・運営をしている

  2. だから、誰よりも使い勝手は分かっている

  3. だから、ユーザーが求めているものも分かっている

私調べですが、エイチームだけでなく、会社を問わず広くあちこちで出るらしいです。
一理あるようにも見えますよね。


しかし、実際はそうでもありません。


色々なプロダクトにおいて「アップデートの度に改悪される」みたいな意見を言っている人っていますよね。
けど、運営が「ユーザーに嫌がらせしてやろう」なんて思うはず無いんです。

じゃあなんでそんなすれ違いが起こるのか?

ユーザーからしたら「求めているもの」が得られていない、これに尽きます。


理想的には、ユーザーの期待と制作者の考えがピッタリ一致して欲しいのですが……。


些細なきっかけで、なぜか両者がすれ違ってしまうことはあります。
そして、これではマイナスの意見が多くでるのも致し方ありません。

こういった事態にならないためには 「ユーザーが本当に求めているもの」を、本気で知りにいく必要があります。


頭で考えただけの「多分こういうのを求めているはず」という仮説では


精度が低いです。


いかにしてリアルな要望を知り、それをプロダクトと結びつけるか?のアクションをこれからお話します。


自分がユーザーであり、ファンであり続ける

まずは、自分自身がユーザーであり、ファンであり続けるのが大事です。


「私生活では使う気がしないけど、仕事としては作るよ」なんて気持ちの人がいるとしましょう。

この人が良い改善を考えて提供してくれそうでしょうか?そうでもないですよね?


普段から当たり前に使うし、人にも積極的に勧める、それくらいの心持ちを常に維持しておきたいです。

悪いものを無理矢理我慢して使えとか人に押し付けろとかそういう話ではありません。
あくまで、いつでも胸を張れるくらい本気で向き合いましょう、というのが主旨です。


具体的に自分がどういうことをしていたかもお話します。

私の担当している Qiita は「エンジニアのための情報共有サービス」です。
「こんなエラーが出たけどこうやったら直った」とか「新しくこういうツールが出たから使ってみた」とか、みんなが色々な記事を書いて知見を共有しあっています。


私はエイチーム内で異動して Qiita の担当になって以来、 Qiita でずっと記事を書いています。

少なくとも 2 週間に 1 記事、気合いを入れていた時期は毎週 1 記事書いていました。
ちなみに一番書いていたタイミングだと 1 ヶ月で 33 記事でしたね。


私はデザイナーなので、普通にしていたらエンジニア向けプロダクトでそんなにしょっちゅう記事を書けるだけの知見なんか溜まらないんですよ。

けど、そんなのは言い訳に過ぎません。
理屈ではなく気持ちの話として「絶対に書く」と決めて、続けています。


おかげで、初心者の疑問から、ある程度慣れてきた感覚までを体感できました。

全員が全員ここまでやる必要は無いかもしれません。
ただ、全ユーザーの中央値とか最頻値とか、「普通くらい」以上に使えていないのであれば、そもそもサービスデザインがどうとか以前の問題です。


実際の利用シーンを見る

前提となるスタンスの話をお伝えしたので、次はアクションの話です。
とにかく大事にして欲しいのは、実際の利用シーンを見ることです。


インタビューやビジネスエスノグラフィーなど手法は色々ありますが、まずはとにかく「目の前で見る」のが大切です。

このテクニックを使えば大丈夫!みたいなものは無くて、プロダクトの特性とか開発フェーズにあわせて、あの手この手で「見る」必要があります。


なんでこんなに「実際に見る」話を強調するかと言うと、頭で「考える」と都合の良いように進めてしまいがちだからです。


達成しないといけない数値目標とか、以前これで成功したから〜という過去の実績とか、そういうのにはどうしても引っ張られます。

また、自分が業界のことを詳しく知り過ぎてしまい「ユーザーも全員知っていて当たり前」と勘違いしてしまうこともあります。


他にも理由は色々ありますが、とにかく、自分達の頭の中だけで考えて決めないことが大事です。

でないと、わざとではなくてもユーザーを置いてけぼりにしてしまう可能性は高いです。


ここでも Qiita での事例を紹介します。


Qiita では、改善したい機能を、日頃からよく使ってくれている人、少しだけ使ったことがある人、などと属性を分けて抽出し、インタビューの依頼をしています。

質問をして、答えてもらえるという機能があるのですが、最近はそのアップデートのためにインタビューをよく実施していました。


質問機能の利用履歴を見て、質問する人、回答する人、それぞれに依頼しました。

案の定というか、僕たちが想定しているよりも色々な回答が出ました。
非常に驚いた例で言うと「自分はこの言語に詳しい自負がある。だから、できるだけたくさん質問に回答して、ちょっとでも業界のためになればと思い、毎日新着の質問をチェックしている」という方がいました。

こんな聖人のような思考、思い浮かんだとしても凄過ぎてペルソナには設定しないですよね。


事実は小説よりも奇なり、なんて言うように、想像しているより遥かにハイレベルな使い方をされることもあるんです。
もちろん逆もまた然り、自分たちが思っていたのの半分も伝わっていない、なんてときもあります。

けど、それで良いんです。


想定していた内容と、実際のユーザーとのギャップを知るのがまず大事です。

そして、それを埋めるためにどうするか?というアクションができれば言うことはありません。


仮説を検証できる、良いプロトタイプを作る

では、ユーザーを知り、真に迫った仮説や検証したい項目が出てきたとします。

ここで鈍重になってはいけません。


分かりやすくするための極端な話ですが、どれだけ良い仮説が浮かんだとしても、リリースが 5 年後だったらどうでしょう?


多分世の中は大きく変化して、今は良い内容でも 5 年後ではイマイチになってしまいますよね。


突き詰めていくと、来年より今年、来月より今月と、できるだけ早く世に出して、再び生の声を聞いた方が良い、という結論が導けます。

ではどうすれば早く世に出せるのでしょうか?


検証したいことを検証できるだけの、最小構成を考えて作るのが大事です。


既に十分に仮説が検証できるのにそれ以上作り込むのはエゴです。
逆に、速さを意識し過ぎて「インタビューしてみたけど何も分からない」となっては本末転倒です。

過不足無いものを作るのが大事、ということですね。


世の中全員が使えるようにリリースするより、クローズドに招待して検証する方が早いです。
実際に使えるサイトを作るより、 Figma のプロトタイプなどを作る方が早いです。
見た目を作り込んだデータを作るより、ワイヤーフレームとかテキストだけで検証する方が早いです。

繰り返しになりますが、いつも簡素に検証しましょうという訳ではなく、ある価値を検証できる最小限のラインを考えて作るのが大事、という話です。


Qiita でやったことを共有します。


あるとき、かなり大掛かりな機能を作ろうとしていました。

開発をするとなると、どれだけ急いでも半年くらいはかかりそうな見積もり。

しかも、開発してから営業に行って、契約してもらう必要もありました。
半年かけて、どこの企業も使ってくれなかったら一大事ですよね。


というわけで、 Figma のプロトタイプを使って、操作している風の画面遷移を作成しました。

プロトタイプを営業メンバーに使ってもらって商談を進め、まだ実際には出来上がっていないページのフィードバックを受け取ることができました。

これで、最初期は不要そうな部分とか、逆に利用初日から絶対必須な部分とか、色々な示唆が得られました。


デザイナーだけで固まらない

「ユーザーの生の声」を得られたとして、その後のアクションも大事です。


「生の声といっても定量的じゃないし全数も少ないから、これだけでは判断できない」みたいな感想を持つ人もきっといます。


職業柄と言いますか、デザイナーはこのような定性的な情報にも価値を感じやすいので「なんで理解してくれないんだ!」と嫌な感情が湧いてしまうかもしれません。

ただ、バックグラウンドが違えば価値を感じやすい情報の種類も違うものです。


サービスデザインにおいて大事な観点として「いい体験を提供するための組織や文化ごと作っていく」があります。
ですから、色々な取り組みをはじめる際に「デザイナーだけ」では実施しない方が良いです。

(言い方が悪くなってしまいますが)裏で何かコソコソやられて、ある日急に見慣れない「ユーザーの生の声」という形式のレポートを出されたら、受け取る方はビックリしますよね?


1 つのプロダクトを作るにも色々な職種・役割の人がいます。
最初からみんなを巻き込んで、小さくはじめましょう。

そうして小さな成功体験の獲得から狙った方が、組織として良いものを提供できる確率が高いです。


Qiita では、基本的にデザイナーだけで新しく何かをすることはありません。


ドキュメントを書く文化が根付いているのもあり、記事を書いて全員に公開し、意見を募ることから始めます。

反応が良ければ適宜キーパーソンを巻き込んで進めますし、イマイチならイマイチで「どんな内容ならみんなでやる意義があるか?」といった対話を実施します。


まとめ

最後に、簡単ですが内容をまとめます。


  • 自分がユーザーであり、ファンであり続ける

  • 実際の利用シーンを見る

  • 仮説を検証できる、良いプロトタイプを作る

  • デザイナーだけで固まらない

以上、サービスデザイン攻略法という文脈で、ユーザーが本当に求めているものを知るためのアクションを発表しました。


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