エンジニアのスペシャリストが実践するエンジニア思考の実践法!「活動負債」を減らしビジネスの成長を目指す
エイチームにはエンジニアやデザイナーなど様々な職種の社員が在籍しており、それぞれが専門性を発揮しています。今回は、エンジニアならではの独自の思考にスポットをあてます。今回のインタビューは、エンジニアのスペシャリストとしてエイチームライフデザインの技術力を牽引するA.U.さん。ビジネスを成長させるエンジニア思考について、ご自身の経験を振り返りながらお話ししてもらいました。
エイチームライフデザイン 技術開発室 A.U.さん
2014年に新卒で入社。『ナビクル』の開発等を担当した後、サービスの枠を超えて社内の自動化や業務効率化にかかわる開発業務に従事する。マネージャーに昇格後、ライフエンディング事業、化粧品などのD2C事業、不動産事業など、様々な領域で新規事業の開発を担当。2021年より技術開発室に所属し、全社の技術力を底上げするエンジニアのスペシャリストとして活躍している。
※取材時当時の所属
社内外へ対するスペシャリストとしての役割
全社の技術を支える、エンジニアのスペシャリスト集団
エイチームライフデザインの技術開発部に所属しています。技術開発室は、いわば「エンジニアのスペシャリスト集団」。特定の事業やサービスの開発を担当するのではなく、社内の共通基盤の開発を担う部署です。
また、開発リソースが足らないときにヘルプに回ったり、事業の立ち上げ期に高い技術力で立ち上げをサポートしたりなど、必要に応じて様々な開発領域にスペシャリストとして対応することもあります。その他、全社の技術レベルの強化を目的に、社外との技術交流や自社の技術の発信などを行うこともミッションの一つです。
社外への橋渡しと、社内へのレクチャー
私個人として積極的に実践しているのは、会社の技術を社外へオープンにすること。目的は、社外への「技術の橋渡し」です。技術・エンジニア業界における自分たちの技術レベルを知り、そのうえで自社のサービスにインパクトを与えるような技術をキャッチアップして、導入していくことに取り組んでいます。
一方、社内に対しては、その場しのぎではない、数年先を見越しての技術の開発や導入を実施しています。そうした観点で開発を行いながら、適正なノウハウやスキルをメンバーにレクチャーして、メンバーたちの自立、自走を促すことも自分の務めです。
社内のメンバーから質問される機会も多く「コードをレビューしてください」「ここはどのように書いたらいいでしょうか」といった質問に対して、しっかり応えていくことも大切な役割だと思っています。
将来のエンジニアたちのストレスを軽減する
自分が開発したものが数年後に及ぼす影響
私たちが開発を行うのは、今、求められたことに対して応えたり、目の前にある問題を解決したりすることが目的です。しかし、目の前にある目的だけではなく、自分が開発したものが1年後、3年後にどのような影響を及ぼすのか、ユーザーの方々や社内のエンジニア、他のメンバーにどんな影響をもたらすのか。そこまで考えて開発を行うことが、個人的にはとても大事だと思っています。
創業から現在に至るまで、エイチームには技術に関する豊富な蓄積があります。しかし、その蓄積が、その場しのぎの、その瞬間だけの最適解を考えたものばかりだったら・・・後輩エンジニアが苦労する事態も起こり得ます。
今は良くても、後々になって「扱いづらい」と将来のエンジニアたちが苦しむのは良くないと思うんです。いかに、将来のストレスを軽減できるか、今の段階で未然に防げるか。それを意識して、開発を行うようにしています。
先々の影響を考えるキッカケとなった後輩の一言
日々の業務活動・生産活動が後に負債となることを、個人的に「活動負債」と呼んでいます。「活動負債」について考えるようになったのは、自分の開発したシステムに対する後輩の意見を目にしたことがキッカケです。
実は入社当時、私自身も担当していたシステムに対して少し違和感を持っていました。数年は稼働していたシステムでしたが、扱いづらいと感じる点がありました。でも、新卒で入社したばかりで良し悪しの判断ができなかったですし、しっかり売上もあがっていたので、特に問題視することはありませんでした。
その後、別のシステムをイチから立ち上げる機会があったときに、仕事に手応えを感じて凄く楽しんで開発ができたんです。しかし、その担当から離れた数年後に、社内のチャットで「なんだこのシステムは?!」と後輩から書き込みをされてしまったんです。
その時は最適だ・完璧だと思って作ったものでも、環境・状況の変化によっていつの間にか辻褄が合わなくなり、管理しづらいものに変わります。自分が入社当初に感じていた違和感が、そのまま自分自身に返ってきたような感覚になりました。
リプレイスの繰り返しは“負の連鎖”?
例えば、システムリプレイスというワードを社内でよく耳にします。実際に、自分自身もこれまで何度も行ってきました。しかし、その経験を重ねる中で、その瞬間の課題にだけフォーカスしたリプレイスは、負債を別の形に変えただけの繰り返しであるように思えてきました。
その活動によって得られる恩恵と新たに生まれる負債を正しく見通し、そしてチームメンバーが負債の返済能力とその習慣を身に付けなければ、リプレイスをする意味がありません。そんな考えもあり、将来のストレスを軽減する開発を意識するようになったんです。
「活動負債」をベースとしたエンジニア以外とのコミュニケーション
リスクを問うコミュニケーションを実践
「活動負債」の思考は、エンジニア以外の人たちとのコミュニケーションにおいても意識するようにしています。例えば、新しい企画や施策が動き出す際、「どんなロードマップがあるのか」「勝算はあるのか」といった問いを投げかけます。そうした問いに対しては、大抵、みんな良いことを言うんですね。「売上がアップする」とか。
でも、先のことを考える大切さを痛感している私は「失敗したら?」「失敗したときどうリカバリーするの?」「別のものに転換できる見込みはあるか?」など、さらに突っ込んだコミュニケーションを取るようにしています。
意識的な衝突がもたらす相互理解
エンジニア以外の人とは共通の概念や言語を所有しているわけではないので、コミュニケーションがスムーズに進まないこともあります。例えば、事業責任者やマーケティング担当から、売上や利益を優先した提案を受けることがあります。それに対して、私からは「今はそれでもいいですが、数ヵ月後、数年後にこんなリスクが想定されますよ」といったことを伝えます。
衝突することもありますが、意味のある衝突を意図的に行うことは大事だと思うんです。お互いの立場やアプローチは違いますが目的は同じです。お互いに納得できることを意識しながら意見をぶつけ合えば、最終的に合意に至ることができます。
また、敢えて衝突を繰り返すことで、お互いの発言や考えにどんな目的や意図、背景があるのかも理解し合えるようになります。理解し合えれば「(この人には)こういう伝え方をしたら議論が良い方向に発展していくだろう」といったことも考えることができ、議論の質も高くなります。
エンジニアもリクエストをすべき立場
一般的にエンジニアは、リクエストを受ける側に立っていると思います。でも、対等に仕事をしているわけなので、エンジニアから他職種に対して要望を伝えても良いと思うんです。
私は衝突を恐れずにリクエストを発信するようにしています。同じ目的に向かう仲間同士、信頼関係があれば言いづらいことも言い合えるはずです。言いたいことを言い合うことで信頼関係もより強固になると思います。また、意見を言い合えるフラットな環境であれば、新しい考え方も生まれ、イノベーションも起こりやすいと考えています。
慎重になり過ぎて足を止めないための思考法
負債はゼロにできない、だからこそ考えるべきこと
「活動負債」をゼロにすることは不可能だと思っています。どんなに優秀なシステムでも数年後には何らかの負債が生まれます。私たちが考えるべきは、いかに負債を小さくして、返済しやすい状態を維持し、後々のストレスを軽減するか。そこが大前提です。
こうした考え方に対して、次のような批判もあるかもしれません。「先々のことばかり考えていると、慎重になり過ぎて、行動を起こせなくなることもあるのではないか?」。確かに、慎重になって足を止めてしまうのは私も良くないと思います。
二者択一ではなく、可能性を探る
やるかやらないか、言い換えれば、進むのか足を止めるのかという二者択一ではないと思っています。ですから、自分にとって足を止めるという選択肢はありません。うまくいく場合、いかなかった場合の両面を考えながら、どの道が最も「勝率が高い」のかを考えるようにしています。つまり、可能性の問題ですね。
最もうまく行くであろう選択肢を探りながら、前進していくイメージです。でも、ときには為す術がなくて「エイヤー!」と気合いで進んでしまうこともあります。その際は、気合いで前進する決断をしたことと、その後の影響については忘れずに考えるようにしています。
社外での活動が自分にもたらすもの
プライベートの時間も技術研鑚
プライベートの時間でも新しい技術を使ったり、トレンドに触れたりする機会を設けるようにしています。仕事のために意識的にやっているというよりも、ただ、好きで楽しいからやっています。普段から接しているおかげで、今、技術の世界で起きていることや今後の動向をキャッチアップすることができています。社外のエンジニアとも交流することが多く、様々な考え方に触れることでアイデアも出しやすくなっています。
社外に目を向けることで得られる業界水準の物差し
会社の外で技術に触れることのメリットの一つが、業界水準の物差しが持てるようになること。その物差しを持つことで、自分がエンジニアとして行っていることが将来はどうなっていくのか、この先どんな技術が求められるのか、あるいは求められなくなるのか、そういったことを捉えられるようになります。
エイチーム社内を見渡すと、エンジニアはもちろんエンジニア以外の職種でも、社内ではなく社外の、つまり業界水準の物差しを持っている人が活躍しているように感じます。
目指すは、社外にも影響力を持つエンジニア
社外に対して影響力を持てるようにしたいです。私たちエンジニアが扱う技術は、社内だけのものではないと考えています。自分たちで使う道具である技術を社外へもっと広げていきたいです。多くのエンジニアとそれを共有して、お互いに高め合って、それぞれ社内に持ち帰って各社の技術力を上げていく。そうした影響力を持つ存在になりたいです。その結果、私と一緒に働きたいという理由でエイチームに入社してくれる人が出てきてくれたら嬉しいですね。