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CX(顧客体験)向上を推進する「CX推進室」。お客さまに「良かった」を提供するため「人の力」と「テクノロジー」を融合して挑む

エイチームライフデザインのCX推進室室長を務める常深香里さんは、お客さまとの継続的な接点の中で顧客体験価値を捉え、価値の質を高める仕組みづくりに取り組んでいます。これまでの経験、キャリアを振り返りながら、仕組みづくりの内容やCX推進の展望などについてお話を聞きました。
 
エイチームライフデザイン CX推進室室長 常深香里さん
大学で情報工学を学び、2010年に新卒でエイチームに入社。入社後はエンジニアとしてブライダル事業の開発等を担当する。産休・育休を経て、2021年、当時のグループ会社のエイチームブライズ代表取締役社長に就任。現在は、エイチームライフデザインのCX推進室室長として全社的なCX向上を推進している。

「お客さまへの提供価値」×「儲けること」の両立が事業成長には必要

“Ateam Purpose”の発表で、入社当時の記憶が蘇る

エイチームの価値と強さの源泉を改めて振り返ってみると、内定者時代に遡ります。当時のエイチームは未上場で、会社もサービスの規模も大きくありませんでした。そんな中、内定者懇親会でマネージャーの方々が「自分たちのサービスを通じて世の中を変えたい。」「世界中に“楽しい”を届けていきたい。」と熱く語っていたんです。社長だけではなく、事業の第一線で働くマネージャーたちが語っていたことに衝撃を受けました。
 
昨年、この時の光景が思い出される瞬間がありました。“Ateam Purpose”の「Creativity × Techで、世の中をもっと便利に、もっと楽しくすること」が発表されたときです。“Ateam Purpose”の内容が、当時のマネージャーたちが語っていたことと重なりました。そして、パーパスに込められた「創造性」と「技術力」をもって、世の中をもっと便利にしていきたい、もっと楽しくしていきたい、この想いがエイチームのDNAとして根付き、そして今もなお続いているとも感じました。

お客さまに価値を提供するために自分ができること

入社後の仕事は、2008年にサービス開始した結婚式場情報サイト「すぐ婚!navi」を運営するブライダル事業での開発でした。立ち上げ期で、人もお金もありません。必然的に、開発業務以外にも様々な業務を担当しました。
 
ウエディングデスクでの接客、お客さまや式場さまからの電話対応、名古屋駅前でのビラ配り、広告の企画やデザインなども担当しました。もっとお客さまに立ち寄っていただける施策はないかと考えて、趣味を活かしたブライダルネイルの提供も提案しました。
 
この新規のサービスを成長させたい。そして、お客さまにもっとサービスを届けたい。その想いで「自分がやれることは何でもやろう」「やれる方法を考え抜いて実践しよう」というスタンスで何にでも取り組みました。

「お客さまへの想い」と「事業として儲けること」の両立

そのころ、ライフスタイルサポート事業の「引越し侍」や「ナビクル」と比べ、「すぐ婚!navi」は伸び悩んでいました。今振り返ると、エイチームグループで蓄積されたスキルやナレッジ、成功事例の横展開など、グループ間で協力したほうが上手くいったこともたくさんあったはずです。自分たちだけで何とかしよう、そうした気持ちが強すぎました。
 
また、「儲けること」への意識が希薄だったかもしれません。サービスを運営して、お客さまに選ばれて、ご利用いただいた結果として利益を得る。得た利益で、サービスをより良くしていく。つまり、このサイクルの継続によって、より選ばれるサービスに進化して、私たちの儲けにつながり、結果としてお客さまへの提供価値が高まっていく。
 
そのためには「お客さまへの想い」と同じくらい、「儲けること」にこだわることが必要です。そういった考えが足らなかったことも事業が伸び悩んだ要因だったように感じます。

事業成長に向けた「攻め」「守り」の投資

「すぐ婚!navi」から「ハナユメ」へリブランディング

2016年には、「すぐ婚!navi」がブランドリニューアルして「ハナユメ」に生まれ変わりました。ターゲットユーザーを広げ、ブランドチェンジに加えサービスサイトをフルリニューアルし、一部ビジネスモデルも変えました。
 
壮大なプロジェクトでしたが、「一組でも多くのカップルに“理想の結婚式”のきっかけを」というサービス理念のもと「ハナユメ」の価値を今よりもっと多くのカップルにお届けしたい、そして事業としても成長させ、ブライダル業界全体の成長にも貢献したい、そんな想いでした。

伸びているからこそ「守り」の動きを

リブランディング以降も開発をメインに担当し、2018年に当時のエイチームブライズの技術開発部の部長に就任しました。その当時は売上や利益も伸びており、開発の規模も大きくなっていました。
 
この先10年、20年とサービスを存続させていくために、これまでの技術的負債の解消やアクセスがさらに増えたときの対応など、サービス拡大へ向けての準備が必要になっていました。その準備をミッションとして発足したのが技術開発部。事業が伸びているときに・・・いや、伸びているからこそ「攻め」ではなく今後に向けての「守り」を固める部署です。具体的にはシステムのリプレイスやインフラの整備を実施しました。
 
翌年の2019年に産休・育休に入り、2020年4月に復職したんですが、この時は自分のキャリアに大きな変化が訪れるとは考えてもいませんでした。

お客さまへの価値提供は何かを考え続け、社長に就任

「DXってなに?」から始まった

2020年4月に復職したときに「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進をやってほしい」と言われたんです。当時は「DXってなに?」というくらい知識も何もない状態からのスタートでした。
 
DXに取り組む目的はお客さまのサービス体験の向上です。「ハナユメ」はWebサイト以外にも、電話等でのサポート、店舗での接客など、オンライン・オフライン問わず様々なチャネルで顧客接点が存在します。さらに、結婚式の価値観の多様化によって、お客さまの悩みや要望も複雑化しています。こうした背景から、CX(顧客体験)の向上が事業課題として急務でした。
 
そしてCXに取り組むためには顧客データの蓄積と活用が必要となってきます。そのようにしてDXの推進が始まりました。具体的には、データの統合や蓄積、データをもとにした営業戦略やお客さまへのサポートを実施できる基盤の構築を進めていきました。

なぜ今「CX向上」が重要なのか

企業と顧客とのコミュニケーションはマスメディアを使って企業からユーザーへ一方的に情報を発信する形が一般的でしたが、ユーザー自身が情報を発信できる時代になりました。ユーザー発信で個々の顧客体験が世の中にどんどん広がっていく中で、口コミやインフルエンサーも含めた様々な選択肢からサービスを選べる状況に変化しました。
 
また、エンジニアじゃなくてもWebサイト、ECサイトを簡単に作れる今、サービスの機能や性能などの「機能的価値」による差別化が難しくなっています。お客さまの満足感や優越感といった「情緒的価値」による差別化が企業の課題になっており、その課題解決の手段としてCX向上が注目されてきたのだと思います。

ある日突然、社長になる

DX推進に取り組む中、突然、驚くようなことを打診されました。「社長をやってみない?」と。DXのことがようやくわかり始めたころのことでした。驚きましたが、その場で「やらせてください」と答えたんです。悩みはありませんでした。
 
入社して10年以上、様々なことに挑戦させてもらいました。もちろん失敗もしてきましたが、経験したことのすべてがその後の自分を形成する要素になっていると実感していました。また、これまで上司たちが様々なことを自分に任せてくれるのは、上司はできるビジョンを描いてくれている、だから、自分に任せてくれるんだと思っていました。
 
期待に応えたい。挑戦してみたい。「社長をやってみない?」という打診にすぐ応えていました。とはいえ、不安はありました。復職して数ヵ月でしたし、経営の経験はありません。しかも、コロナ禍でブライダル事業が厳しい状況におかれていました。

サービス理念が浸透しているから全員で前進できる


不安はありましたが、メンバーに随分と支えられたように思います。現場のメンバーが「今、コロナの影響で店舗は稼働できないけど、その分、今後の資産になるようなことを今のうちにやっておきましょう!」と言ってくれるなど、みんなで前へ進もうと盛り立ててくれました。
 
ブライダル事業は、昔からずっとサービス理念が社内に浸透しています。全員が会社、事業を良くしていこうと一丸となっており、代表の自分だけが踏ん張らなくてはいけない状況ではありませんでした。本当にみんなに助けられました。

ライフスタイルサポート事業領域の大規模なCXに挑戦

データ活用で一人ひとりのニーズに対応

2022年2月には、事業・組織の再編によりいくつかの子会社を統合し、エイチームライフデザインがスタート。同時に発足したCX推進室の室長として、ブライダル事業で推進したDXをエイチームライフデザイン全社で推進していくことが私の役割です。
 
推進室のミッションは、データ統合によりお客さま一人ひとりにとって適切なやり方とタイミングでサービスを提供できる基盤を構築すること。これまでのサービスは、多くのお客さまの最大公約数をカバーできるような形で価値提供がされてきたと思います。
 
今は、テクノロジーを用いることで、よりパーソナライズされたサービスが提供できるようになりました。デジタルデータの活用により、お客さま一人ひとりのニーズに応えていくこと。CX向上を推進していくためには、パーソナライズがカギになってくるはずです。

テクノロジーと人の力の共存

お客さまがリアルの店舗で物を購入する場合は購入の履歴しか追えません。しかしデジタル上ではコンバージョンに至るプロセスからその後の行動まで追うことができ、それをデータとして蓄積することができます。
 
購買体験やコミュニケーションの主体がデジタルに変化してきたことで、得られるデータの幅も広がってきました。そのデータを積極的に活用して適切なタイミングで商品をレコメンドしたり、お客さまの潜在ニーズを深掘りしたり、お客さまのサポート品質を高めたりすることができると思います。
 
でも、テクノロジーだけではなく「人の力」もCX向上には必要です。データの活用やチャネルの多様化が進む中で、テクノロジーと人との分業により幅広いニーズに対して細やかに対応していくことがCX向上には欠かせないと考えています。テクノロジーの活用と人による情緒的な価値をバランスよく共存させる。そうすることでより多くのお客さまのニーズを満たすことができ、それがより良い顧客体験につながっていくと思います。
 
※コンバージョン…Webサイトの訪問者が、そのWebサイトにおける目標としているアクション(資料請求・購買など)を起こしてくれた状態のことを指す

変化に柔軟かつ敏感であり続ける

CX向上は長期的な取り組みです。それ故に変化に柔軟かつ敏感であり続けたいと考えています。今、最適だと考えているCX向上のあり方が1年先、2年先は最適ではないこともあり得ます。今、最適だと考えて使用しているシステムやツールが数年後にはそうではなくなることもあるでしょう。そういったことをキャッチできなかった結果、CXの向上という目的を果たせないといった事態は避けたいです。
 
今の時点で見えているゴールだけを目指して進んでしまうと、違ったところに行ってしまうかもしれません。今見えているゴールを目指しながらも、社会、競合サービス、自分たちのサービスのあり方を見ながら柔軟に対応していきたいと考えています。

「お客さま」の姿を想像することが創造を生む

データの向こう側にはお客さまがいる

仕事をするうえで、ずっと大切にしてきたことがあります。それは、お客さまのほうを向くこと。至極当たり前のことですが、お客さまと対面しなくてもサービスを届けられるWebサービスだからこそ強く意識しています。
 
データは大事です。でも、データの向こう側にお客さまがいることを忘れてはなりません。このことはCX向上を推進していくうえでも、とても重要だと思っています。
 
お客さまにとって何が最適なのか。それを常に自身に問いかけていきたいです。データばかりに目を向けるとお客さまが置き去りになってしまいます。データに目を向けつつ、その向こう側にお客さまがいることも意識して、バランスよく進めていきたいです。

エラーログの先には困っているお客さまがいる

顧客志向を強く意識するようになったのは、ブライダル事業のシステム担当だったころにリアルイベントなどで実際にお客さまと接する機会があったことと、加えて、入社間もないころのある経験が影響しています。
 
当時の上司と障害対応におけるエラーログを見ていたとき、上司がこう言ったんです。「ログだけを見るとエラーはこの一行の文字列でしかない。でも、この一行が出ているということは、今、あるお客さまにとっては、サービスを使いたかったのに使えなくなっているということなんだ」と。それを聞いてハッとしました。
 
目の前に表示されているのは「エラーが出た」という文字データでしかない。でも、今まさにお客さまにとって本来は喜ばしい、嬉しいはずの瞬間が、残念な瞬間になっているんだ、と。この経験も、お客さまのほうを向くきっかけになったと思います。

CX推進でエイチームを次のステージへ

CX推進はエイチームにとっても新しい取り組みです。そこに挑戦し、アセットにしていきたいと考えています。エイチームが次のステージへ進むには、CXの向上による価値提供が大きなカギになると思います。
 
今、自身に任されているCXの推進を「成功」と言えるレベルまで持っていくことが私の目指していることであり、一番やりたいことでもあります。

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