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【サステナビリティ/人的資本】“一緒に働く仲間”を大切にしてきたエイチームの「人的資本」とは?人的資本開示のプロジェクトを推進した人事がエイチームの“人”について語る

「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」という経営理念の実現に向けて、最も大切なものは「“人”=“一緒に働く仲間”」と私たちは考えています。私たちは、エイチームという社名とロゴに込められた想いのように、スペシャリストを表す「A」なる人たちがチームとなって困難を乗り越えていくチームワークで解決に導いていくプロフェッショナル集団でありたい。一緒に働く仲間こそが、最も大切なのです。

こうした考えのもと、これまで社員の働く環境や福利厚生、モチベーション高く働ける環境づくり、各種人事制度や研修制度などを通じて人的資本を拡充してきました。2023年3月にエイチームの人的資本開示に取り組むプロジェクトが発足。本プロジェクトを推進した人材開発部 人事企画グループの近藤詩織さんと伊藤菜七子さんに、エイチームの「人的資本」の方針や考え方、検討のプロセスなどを聞きました。

近藤詩織さん エイチーム 人材開発部 人事企画グループ・労務グループ(写真右)
地方銀行で営業職を経験した後、2017年にエイチームに入社。エイチームライフスタイル(現エイチームライフデザイン)の業務推進部で管理業務やサポート業務を担当する。育休を経て2021年に人材開発部へ異動。現在は、人事企画グループと労務グループを兼務している。

伊藤菜七子さん エイチーム 人材開発部 人事企画グループ(写真左)
フィットネスクラブのインストラクターを経て、2012年にエイチームに入社。『引越し侍』のカスタマーサポートを経験後、コールセンター部門に異動し沖縄支店の支店長を務める。2023年より人材開発部に所属し、人事企画グループのマネージャーを務めている。

手探りで始まった「人的資本開示」プロジェクト

-「人的資本開示」に向き合い始めた経緯と当時の心境について教えてください。

近藤:
現在、社会から企業のサステナビリティに関する開示の要請が強まってきており、2023年3月期の決算からは上場企業を対象に有価証券報告書でサステナビリティへの取組みの情報開示が義務化されました。こうした世の中の動きにあわせて、社内に「サステナビリティ開示プロジェクト」が発足し、人的資本開示のプロジェクトはその分科会としてスタートしました。初めての取り組みでしたし、身近な有効な参考事例もなく、最初は手探りで進めていきました。

伊藤:
私は途中からプロジェクトに参加したこともあり、本当に手探りでした。最初は「世の中にそんなルールができたんだ」といった状態からのスタートでした。

近藤:
最初は手探りでしたけど、検討を始める前に、プロジェクトメンバー全員で「サステナビリティとは」「気候変動問題」「人的資本」など、全体像を理解するための勉強会があったことは良かったです。社会全体でなぜサステビリティやESGへの取り組みが必要とされているのか、どういう経緯で始まったのか、これから自分たちが何をすべきかが理解できました。また、私の業務としても関わりの深い「人的資本」という新たな分野について学ぶ土台を整えることもできました。プロジェクトを進める上で重要な機会になったと思います。

-プロジェクトが始まった頃は、「人的資本」についてどのような考えを持っていましたか?

伊藤:
最初は難しい言葉のように感じましたが、簡単に言い換えると「会社にとって人は大事」という意味だと気づきました。エイチームでは共通の価値観である“Ateam People”を大切にしています。今まで私たちがやってきたことと大きな違いはないと解釈しました。

たとえば、エイチームには様々な事業・サービスがありますが、"何を"やるのかよりも、"誰と"サービスをつくっていくのか、どんな仲間と価値提供を行っていくのか。私たちはそれを大切にしてきました。つまり“Ateam People”という価値観を大切にして、かつ実践をしてきており、それと同じことだと考えていました。

近藤:
私も同じような考えを持っていました。「人的資本経営」といったことが言われる前から、エイチームはそれを実践してきたと言えます。“Ateam People”でも「経営理念の実現のために最も大切なものは、“人”=“一緒に働く仲間”」と明文化されています。

これは、「中長期的に企業価値を向上していくためには経営理念の実現が必要であり、そのためには“人”が一番大事だ」という意味と捉えることもできます。まさに「人的資本」の考え方そのものです。エイチームには元々根づいていた考え方だと思います。

-なぜ、エイチームには人を大切にする文化が根づいているのでしょうか?

伊藤:
社長から創業以来のエピソードをいくつか聞く機会がありました。その度に「誰とやるのか、どんな仲間とやっていくのか。それが大事である」というメッセージを受け取ってきたように感じます。社長が人を大切にしていることと、その考えが社員に浸透していることが要因の一つだと思います。

近藤:
エイチームは様々な事業を展開していますが、それぞれの事業がハイスピードで変化を続けています。変化のスピードが早い分、仕組み化するのが難しいと思います。ゆえに仕組みやマニュアルではなくて、事業を動かす“人”が大事になってきたのではないでしょうか。常に変化が求められていく中で、共通のマニュアルではなく経験やノウハウが人や組織に紐づいてきた。その人や組織が価値を生み出していく源泉として機能してきたのだと思います。

「人的資本」の方針が“Ateam People”に定まるまで

-分科会の発足から情報開示までのプロセスを教えてください。

近藤:
エイチームは7月決算ですので、2023年10月末の有価証券報告書での開示がゴールです。サステナビリティサイトや統合報告書なども視野にいれつつ、開示要請として優先度の高い有価証券報告書の発行をベンチマークとして、同年3月に人的資本開示を議論する分科会が発足しました。

初めての取り組みだったこともあり専門の部署がなく、人事とIRの部門でプロジェクトチームを組んで推進していきました。2週間に1回のペースでミーティングを行い、継続的に議論を重ねていきました。ゴールイメージをすり合わせた後、スケジュールや役割分担などを検討していきました。

-どのようなゴールをイメージしたのでしょうか?

近藤:
方針を決めるにあたって、「過去に実施した施策」「現在実施している施策」をまとめることから始めました。次に、各施策の目的やそれぞれの関係性について、経営理念や“Ateam People”、“Ateam Purpose”、エイチームの企業文化など様々な要素を考慮しながら整理をしていきました。

整理を進めていく中で「“Ateam People”が既に私たちに浸透しており、人材に対する価値観の根底にあるもの」と全員で合意することができたんです。今回の有価証券報告書では“Ateam People”を軸にアウトプットを行いました。

伊藤:
でも、エイチームの人材方針の軸は“Ateam People”であるという真理にたどり着くまでは苦労しましたね。

近藤:
そうですね。目的や関係性を整理したとお伝えしましたが、最初は情報開示が期待されている7分野・19項目のカテゴリー*にとりあえず当てはめていくような進め方をしていたんです。結果、自分たちが向かうべき方向が定まらずに議論がまとまらなくなっていきました。
※内閣官房(経済産業省)が公表した「人的資本可視化指針」に記載。本指針は、上場企業向けの人的資本に関する開示のガイドライン。

そんなとき、改めてエイチームの人材方針で大切にすべき点を社長に壁打ちしようということで、「人的資本」について社長と会話する機会を設けました。社長との対話のなかで「やっぱり“Ateam People”だよね」という話になったんです。

“Ateam People”は全社員が等しく共に共通の価値観であること。そして、「“Ateam People”はまだ伸びしろがある」ことにも気づきました。既にみんなが実践しているとはいえ、それぞれに弱い部分や苦手な部分があるなど個人差はあります。より“Ateam Poeple”を実践していき、共感の範囲を増やしていけるはず。このあたりを、私たち人事が主体となって検討、推進していきたいとも思っています。

伊藤:
“Ateam People”は社内に浸透していると実感しています。個人的にも解像度が高い言葉です。これを人的資本の方針とすることは社員へ発信する立場としても納得感がありますし、長く事業運営に携わっていた身として、自分が受信する立場であっても納得がしやすいと思います。

近藤さんが言うように“Ateam People”の実現のレベルにはまだ個人差があります。コーポレート部門に異動してきてからグループ全体が見渡せるようになると、各個人の差だけではなくグループ会社間にも差異があることに気づきます。これからは全社で足並みを揃えて“Ateam People”を大事にしていくことがより一層求められると思います。実現のレベルは定量化できるわけではないので、課題を可視化していくことも重要になってくるはずです。人的資本の方針になったことで、“Ateam People”における課題もより明確になりました。

エイチームの「人的資本方針」の内容について

2023年7月期 有価証券報告書「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3662/yuho_pdf/S100S2IN/00.pdf

-今回開示したエイチームの人的資本について教えてください

近藤:
こちらの図が、2023年10月末に有価証券報告書で報告したエイチームの人的資本に関する人材方針です。

人的資本の方針を検討する中で、エイチームが実施している施策をマッピングして、カテゴライズしました。「才能の発見」「成長の促進」など、それぞれの施策をカテゴリー別に分けて表記しています。また、例えば「『才能の発見』をしながら『成長の促進』を目指していく」「『知の共有』をしながら『コミュニケーション基盤の構築』をしていき『多様な働き方の推進』をしていくといったように、それぞれの施策・カテゴリーの目的や関係性を考えながら人事施策を整理していきました。

さらに、人材育成方針と環境整備方針の土台となるのが、「労働安全衛生及びコンプライアンス」と書いてあるとおり土台になる部分です。これは、社員の成長を促進することはもとより、社員が安心して働ける環境を整備するための土台としても労働安全衛生とコンプライアンスを実施していることを表しています。

お伝えしたとおり、最初は情報開示が期待されている7分野・19項目に当てはめていくような整理の仕方で進めていました。カテゴリー分けが細かいこともあり、複数のカテゴリーにまたがる場合も多く、整理が難航したのですが、カテゴリーの分け方をエイチームの状況にあったテーマ軸にしたことにより、「これって人材育成方針じゃない?」「これは環境整備方針だ」といった具合に次第に整理ができていったんです。

元々、人的資本検討のためのフレームワークではありませんし、私たち独自のやり方でのマッピングです。でも、このように図式化をしたことでエイチームが実施していることが明確に伝わるアウトプットができたと思っています。

-人的資本に関する取り組みで特にアピールしたい項目はありますか?

伊藤:
会社の経営方針や各事業について発表する「エイチーム全体ミーティング(以下、全体MTG)」は、エイチーム独自のものだと思います。この全体MTGは創業間もない2002年7月から全社員参加型で毎週月曜日に開催されているもので、2022年7月に開催1,000回を迎えました。これほど歴史ある取り組みですので、エイチームの企業文化を形成する基盤にもなっていると思います。

そして、全体MTGは、エイチームの4つの企業文化の一つである「みんなで経営について考える文化」も体現しています。とてもエイチームらしい施策ですし、全社員にとって貴重な機会でもあるので、これからも続けていきたいです。

エイチームの根幹を支える4つの企業文化

近藤:
私は「コミュニケーション基盤の構築」と「多様な働き方の推進」の2つのカテゴリーです。まず「多様な働き方の推進」の施策でいえば「ファミリーサポート制度」。私も子どもを育てながら働いているので、エイチームでの働きやすさを日々実感しています。同じチームのメンバーをはじめ周りの人にいつも助けてもらっていますが、それが当たり前のように浸透しているのって実は凄いことだと思うんです。同時に、当たり前になり過ぎて感謝を忘れてはいけないとも思っています。

「コミュニケーション基盤の構築」は「お互いを認め合う文化」「みんなで経営について考える文化」がエイチームに根づいているからこそ実施できていると思います。これも、当たり前のように浸透していて、こういった土台があることで、ぞれぞれの施策に前向きに取り組んでいるように感じます。

今後の「人的資本経営」へ向けて

-今後の人的資本経営や人事戦略についてお聞かせください。

近藤:
設定した人的資本の方針をもとに何を、どのくらいのレベルまで目指すのかを検討していき、その指標や目標などを今年の有価証券報告書で開示したいと考えています。プロジェクトメンバーだけではなく、エイチームの社員の皆さんが納得感と期待感が持てる内容にしたいです。経営陣や社員の皆さんと課題感を共有し、時には相談もしながら進めていきたいと思っています。

伊藤:
私も同意見です。「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」がエイチームの経営理念。企業文化として「みんなで経営について考える文化」も根づいています。私たちプロジェクトが独り善がりで決めていくのではなくて、みんなが納得して実現へ向けて力を出せるような内容に整えていきたいです。

-最後に、人的資本の領域で個人的に取り組んでみたいことがあれば教えてください。

近藤:
人的資本の情報開示は、企業が強みにしていきたいことを世の中に見せるチャンスでもあると考えています。世の中に伝えていく際は、単に「ここが得意だからこの強みを伸ばそう」「まだ伸びしろがあるから、この弱みを克服しよう」という観点ではなく、戦略的にどこを強みにして、どう伸ばしていくかを考えられると良いと思います例えば、未来のありたい姿を定めて、そこから逆算して世の中にアピールできる強みは何だろうと検討してみる。そんなアプローチをしてみたいです

伊藤:
エイチームはいろいろなサービスを展開しており、それぞれのサービスで様々な職種の人たちが活躍しています。これまで関わりのなかった社員同士が接点を持つことで、化学反応を起こすようなことに取り組んでみたいです。異なる経験やノウハウが掛け合わさることで足し算ではなく掛け算になるような化学反応を起こし、エイチームの企業価値を向上させていきたいです。

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